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特集・家賃滞納トラブル

急増する家賃滞納問題

2008年のリーマンショック以降、全国的に家賃滞納問題が急増しているという話をよく聞きます。

実際、当事務所における家賃滞納の相談件数は大幅に増加しています。
また、裁判所の担当者からも、(家賃滞納を原因とする)強制執行の件数がかなり増えたという話を聞いています。

様々な事情を考慮すると、やはり、世間一般的に、家賃滞納件数は増加していると考えたほうがよいと思います。

それだけ、経済的に厳しい立場に追い込まれている方が少なくないということだと思います。

空室 < 家賃滞納

この家賃滞納問題。

実は、オーナー・管理会社を悩ませる「空室問題」よりも深刻な問題です。

なぜなら、空室問題については、入居者の方さえ見つかればすぐにでも解決できるのに対し、家賃滞納問題は解決までに時間がかかるからです(いくら家賃滞納をしているからといって、「明日にでもすぐに入居者の方を追い出す」ということはできません。)。

つまり、どちらも「家賃が入らない」という意味で本当に悩ましい問題ですが、「解決までに時間がかかる」という点で、家賃滞納のほうがよりいっそう深刻な問題なのです。

どう予防するべきか

では、この家賃滞納問題をどう【予防】すればいいのでしょうか。

それはひとえに、「入居審査の徹底」と「連帯保証人の確保」だと考えています。

入居審査を徹底することで、家賃をきちんと支払うことのできる方に入居していただく。
そして連帯保証人(または家賃保証会社)を確保することで万が一の際の備えをしておく。

基本中の基本ではありますが、この基本を徹底することが本当に必要だと感じています。

どう解決するべきか

では、家賃滞納問題が実際に起きてしまった場合は、解決に向けてどう【行動】すればいいのでしょうか。

これは、「早期に、迅速に対応する」ということです。これに尽きます。

なぜなら、対応が早ければ早いほど、損害(滞納額)を少なくできるからです。

また、初期の段階であれば、入居者の方にとってもメリットがあります。より家賃の安い物件に引越をするなり、生活保護を受けるなりといった方法を選択できるからです。

つまり、早期迅速な対応は、当事者双方にメリットがあります。

これに対し、万が一対応が遅れた場合はどうでしょう。

まず、対応遅れた日数分だけ、損害(滞納額)が膨らむ可能性があります。
そうなると、ローンを完済している物件であれば別ですが、そうでない限り、金融機関に対する月々の返済の問題に直面します。

また、日にちが経てば経つほど、入居者の方の経済状況が厳しくなることもありえます。そうなれば、もはや入居者の方にとっても、引っ越したくても引っ越せない状況になる可能性があります。

したがって、一にも二にも「早期の迅速な対応」が必要になるというわけです。

対応方法①

では、「早期に迅速に対応する」として、具体的にはどう行動すればいいのでしょうか。

まず、滞納が発生したらすぐに、【確認】の連絡を取るようにしてください。
「家賃のお支払いをお忘れではないでしょうか。」
という感じですね。
これは、早ければ早いほど効果があります。

それでもお支払いいただけない場合は、あまり日をあけずにまた確認の連絡を取ります。

そうやって何回か確認の連絡を取ってもなお家賃が振り込まれない場合は、今後どうするのかについて入居者の方と【話し合い】を行います。

そこで、「月々の家賃の支払に加えて、滞納家賃を毎月分割して支払う」というような形や、「いついつまでに退去する」というような形で解決の仕方を模索することになります。

ほとんどのケースは、こういった話し合いで解決されています。

対応方法②

それでは、

  • ○ 家賃を分割で支払うと約束したのに、遅れがちであったり、全く支払ってくれない。
  • ○ いついつまでに退去すると約束したのに、退去してくれない。
  • ○ そもそも連絡が取れず、話し合いにならない。

というように、話し合いで解決しない場合にはどうすればいいでしょうか。

この場合にはもはや(広い意味での)【法的な手段】しかありません。

大変残念ではありますが、こういった場合は単なる話し合いでは解決しないことが明らかだからです。


この場合、まずは、

1.催告書を内容証明郵便で送る

というのが定石です。

これにより、家賃の入金を促すとともに、入居者の方との最後の話し合いを試みます(家賃が入金されなければ契約を解除することも合わせて伝えます。)。


貸主からの催告書を受けて、入居者の方が滞納家賃全額をきちんと入金された場合は、契約は終了せず存続します。
この場合は、これまでと同じように、物件を利用していただく代わりに家賃をもらうことになります。

これに対し、貸主が催告書を発送したにもかかわらず、「入居者の方が受け取らない」、または「受け取っても家賃を支払わない」場合、最終的に契約は解除により終了することになります。
この場合、貸主は

2.物件の明渡を求めて裁判を起こす

ことになります。

契約が終了しているにもかかわらず物件から任意に退去してくれないのでれば、裁判を起こすしかない、ということです。

そして、裁判に勝訴することで、物件からの退去・明渡を貸主は入居者の方に求めていくことになります。

対応方法③

このように、話し合いで解決しない場合は裁判をすることになるのですが、いざ裁判になると「もう仕方がない」ということで自主的に物件から退去される方が少なくありません。

しかし、それでもなお自主的に物件から退去されない入居者の方もなかにはいらっしゃいます。

その場合はやむをえず

3.物件からの退去・明渡を求めて強制執行手続を行う

ということになります。

強制執行手続というのは、裁判所が強制的に物件から入居者を退去させる手続ですので、これにより強制的に物件の明け渡しが完了します。
つまり、「物件をまた次の方に貸せるようになる」というわけです。


このように、貸主と借主の話し合いで解決しない場合は、①催告書の発送(内容証明郵便)、②裁判、③強制執行という流れで行動を起こしていくことになります。

解決までに必要な期間とコスト

最終的に強制執行まで行う場合は、催告書を発送してから強制執行が終わるまで大体「3ヶ月半から半年程度」かかります。

ただ、「3ヶ月半」というのは家賃滞納トラブルの経験が豊富な弁護士が最短で案件を処理できた場合の期間です。
裁判所の状況を含め、手続の進捗にはいろいろな要因の影響を受けますので、「大体4,5ヶ月、場合によっては半年はかかる」と認識されておかれたほうがよいと思います。

次に、その間にかかるコストですが、この間の未収家賃がまずコストとして挙げられます(要するに、家賃が入らないということです。)。
また、「内容証明郵便の郵便代」や「裁判所に支払う裁判費用」なども発生します。
さらに、弁護士に依頼した場合は弁護士費用も発生します。

  1. 1. 未収家賃
  2. 2. 内容証明郵便の郵便代 2,000円前後
  3. 3. 裁判費用(収入印紙代+郵便切手代) 2,000~30,000円程度
  4. 4. 書類取得費(登記簿謄本や固定資産評価証明書の発行手数料) 2,000円前後
  5. 5. 強制執行予納金 65,000円
  6. 6. 強制執行補助業者費用 20㎡程度の1Rで100,000円以上
  7. 7. 弁護士費用
※以上はすべて目安です。物件や管轄裁判所によって異なります。

ご覧の通り、万が一家賃滞納が発生した場合には結構なコストがかかります。
(ですので、その予防がとても重要になります。)

弁護士の活用について

このように、貸主と借主の話し合いで解決しない場合は、①内容証明、②裁判、③強制執行という流れで行動を起こしていくことになりますが、「これらをすべて自分一人で行うことができる」というのであれば、特に弁護士は必要ありません。

これに対し、
○ 自分一人ではとてもできない。
○ やってやれなくはないと思うが、それをやる時間がない。
○ 専門家に任せた方がいい。
とお考えになる場合は、弁護士の活用をご検討ください。
弁護士がお客様の代わりにこれらの手続を一括して代行します。

また、仮に「全て自分でできる」というお考えの方であっても、案件解決までのスピードを重視される場合は、弁護士の活用をご検討ください。
なぜなら、素人の方と弁護士では、手続を前に進めるスピードが圧倒的に違うからです。

特に、家賃滞納トラブルに慣れた弁護士であれば、最終的に1、2ヶ月以上早く案件を終わらせることができると思います。

先ほどご説明したとおり、家賃滞納問題が解決するまでは家賃が入りません。
その間の様々なダメージ(未収家賃の増大や精神的なストレス等)を考えれば、経験豊富な弁護士に依頼するというのも1つの選択肢だと思います。

弁護士の選び方

では、もし弁護士を選ぶとして、どういう基準で選べばいいのでしょうか。
その場合は、以下の3点をポイントに置くとよいと思います。

①スピード、②料金、③相談のしやすさ

  1. 1.スピード

    まずなによりも、「案件を前に進めるスピード」が一番重要です。
    なぜなら、家賃滞納は時間との勝負だからです。

    一日遅れれば、それだけ未収家賃は膨らみます。
    したがって、一日でも早く案件を処理してくれる弁護士に依頼されるべきでしょう。

    そうなると、単に「弁護士である」というだけでは不十分です。
    なぜなら、この分野の裁判に慣れている事務所とそうでない事務所とでは、解決までの期間が場合によっては1ヶ月以上違うことがあるからです。

    実際、当事務所も、家賃滞納問題に取り組み始めた頃は、今と比べて1ヶ月以上期間がかかっていました。
    経験の蓄積と徹底した合理化によって、平均期間を短縮してきています。

    したがって、この分野の裁判に慣れていて、スピードを重視している法律事務所に依頼された方がよいと思います。

    ただ、建物明渡裁判も裁判ですので、「裁判所の状況」や「入居者の方の状況」によって案件の進捗には差が出ます。
    つまり、どこの法律事務所に依頼した場合でも、弁護士のコントロールできない事情によって通常よりも時間がかかることはあります。

    したがって、「法律事務所側でできることをいかに短時間でやっているか」というのが選ぶ際のポイントになります。

    (特に裁判所の混み具合などは弁護士の力ではどうしようもありません。また、裁判所は公平中立を旨としていますから、どこかの法律事務所を優遇することはありません。「うちは裁判所に優遇してもらえる」とお客様に説明している事務所もあるようですが、そういうことはありえませんのでご注意ください。)

  2. 2.料金

    次に、当然ではありますが、「弁護士報酬がいくらなのか」といった点も重要です。

    この「料金」を考える際のポイントは2つあります。

    1つ目は、「結局トータルでいくらかかるのかを見る」ということです。

    法律事務所のホームページでは、「着手金はいくら、成功報酬はいくら」というように定められていることがあります。また、「催告書の発送(内容証明郵便)でいくら、裁判でいくら、強制執行でいくら」というように、段階別に料金が定められていることもありますが、いずれにせよ「最終的な合計額」がお客様の負担となります。
    したがって、「最終的な合計額」を必ず確認するようにしてください。
    そうすればわかりやすくなると思います。

    なお、その際は、「催告書を内容証明郵便で送り、裁判をし、強制執行までした場合の合計額」を確認するようにしてください。というのも、現実問題としては強制執行までしなければならないケースが少なくないからです。
    そこで、最悪強制執行まで行った場合に合計でいくらになるのかを確認するのがよいと思います。

    2つ目のポイントは、「解決までのスピードと料金を合わせて考える」ということです。

    なぜなら、いかに弁護士報酬が安いとしても、解決までの時間が余計にかかるのであれば意味がないからです(その分未収家賃が増えるからです。)。

    たとえば該当物件の家賃を15万円とします。
    そして、A事務所は「弁護士報酬30万円だが、解決までに半年かかる」とし、B事務所は「弁護士報酬50万円だが解決までに4ヶ月かかる」とすると、どうなるでしょうか。

    一見A事務所に頼んだ方が20万円安いように見えますが、その代わりにA事務所はB事務所よりも解決までに2ヶ月余分にかかります。
    とすると、その間の未収家賃は30万円になりますよね。
    とすれば、弁護士費用と未収家賃とトータルで見た場合には、最終的にB事務所のほうが10万円安くなります。

    A事務所 弁護士報酬30万円+未収家賃15万円×6ヶ月=コスト120万円
    B事務所 弁護士報酬50万円+未収家賃15万円×4ヶ月=コスト110万円

    したがって、弁護士を選ぶ際には、料金とスピードの両方を見る必要があります。

  3. 3.相談のしやすさ

    最後に、「相談のしやすさ」も重要です。
    自分の大事な物件のトラブルを任せるわけですから、誰に任せるのかということがとても重要になると思います。

    この点を判断する際は、「法律事務所の規模」、「取り扱っている案件数」、「弁護士の人柄」がポイントになります。

    まず規模ですが、弁護士と医師は職業的にとても似ているので、病院にたとえて考えられるとよいと思います。
    たとえば病院でも「とにかく大きい総合病院がいい」という方もいらっしゃれば、「小さくても専門性が高く信頼できる医師のいる病院のほうがいい」という方もいらっしゃいます。
    総合病院には総合病院のメリット・デメリットがあり、小さな病院には小さな病院のメリット・デメリットがあります。
    どちらを好まれるか判断されたらよいと思います。

    次に、取り扱っている案件数も重要です。
    やはり案件数があまり少ないと、経験・ノウハウを蓄積していくことはできません。
    しかし、一方で、案件数があまり多すぎると、一つ一つの案件を弁護士が丁寧に見ることは当然難しくなります(この場合は弁護士ではないパラリーガルを活用して案件を大量処理することになります。)。
    したがって、「取り扱っている案件の数」と「所属弁護士の数」のバランスが重要になります。
    「基本的に弁護士が案件を全て見ている」形のほうがいいという方もいらっしゃれば、「弁護士でないパラリーガルが最大限活用される」形のほうがいいという方もいらっしゃると思います。
    この点もご自身の好みに合わせてご判断いただければと思います。

南青山法律事務所について

まず当事務所では受任から解決までの期間は最短2ヶ月、平均で約4ヶ月です。
これは、業界内でも相当速いレベルだと思います。

先ほどご説明したとおり、損害の拡大を防ぐためには少しでも速く問題を解決するしかありません。
そこで、正確性を確保しながらより速く事件を解決するための方法を私たちは日夜追求しています。

その結果として、(複数の法律事務所を活用している)不動産管理会社からの依頼が増えています。
他の事務所と比較されるなかでもきちんと結果を出していると自負しています。


次に、当事務所では弁護士が最初から最後まで案件を見るようにしています。

もちろん、必要書類の収集や案件の進捗報告といった作業は事務局が担当いたしますが、「お客様とのご相談・事情の聞き取り」、「書類の作成」といった弁護士の作業はあくまで弁護士が行います。弁護士でないパラリーガルにこうした作業を分担させることはしていません。

もちろん、弁護士もサービス業である以上、効率化は絶対に必要です。
しかし、医師と同じく弁護士はプロフェッションですから、全てを効率化することが良いことであるとは考えておりません。

「ではどこでバランスをとるのが一番良いのか」ということはそれぞれの弁護士が常に頭を悩ませている事柄ですが、少なくとも現時点では現状のやり方が最善であると私たちは考えています。

最後に、料金についてはこちらのページに詳しく記載しておりますので、参考にしてみてください。

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